この記事はプレゼンで承認が取れる確率をあげたい方のためのものです。
役員会など社内のシニアマネジメントからの承認を取るプレゼンを想定しています。

提案に対する相手の態度を把握しておく
プレゼン前日にやっと資料が出来上がったという話をよく耳にします。ぜったいに承認を取りたいという思いいれが強いと資料をあれもこれもと作り込んで情報量の多い資料になってしまうことがありますよね。
もちろん、メインメッセージの説明や、信ぴょう性を高めるには情報が欠かせません。とはいえ大切なことは
「聞き手がそれを聞きたいか、聞きたくなるかどうか」ということです。なので、プレゼン資料を作り出す前に「聞き手がプレゼンのトピックに対して好意的か反対しそうか、無関心/中立的か」を知っておく必要があります。
好意的であればプレゼンの出だしは「自己紹介」「本日のアジェンダ」「構成と予定時間」と定番どおりで充分ですが、反対されそうなとき、無関心の時は工夫が必要です。
無関心のときは、それはこれから話すことが実現するとこんないいことがある。ということを予め話すことです。
かつて役員会のメンバーが提案内容についてあまり知らないし、無関心かもしれないというテーマのプレゼンをしました。その時は注意を惹くために質問を投げかける形をとりました。TEDでは「質問を投げかける」プレゼンの始め方を時折見かけます。
そのときのプレゼンの導入部分はこうでした。
「上司が手取り足取り具体的に指示しなくても、どういう行動をとったらいいか、社員自ら学べる仕組みがあったらいいと思いませんか?」という質問で始める。
この時のテーマは「自社のコンピテンシーモデルを内製する」という提案でした。コンピテンシーモデルについて既に知っている方も、まったく聞いたこともない方もいるだろうと予想したからです。
「これがうまく行ったらこういうことが実現しますよ!」
という大きな絵を描くような始め方が功を奏して役員会は満場一致で承認。さらにトップダウンで現場まで巻き込んで協力までしてくれたので、3ヶ月の予定だったプロジェクトは5週間で完成しました。
なるべく早く資料を仕上げて会議室で練習する具体的な方法
プレゼンの資料をなるべく早く仕上げたほうがいいと改めて書くのは、完璧に出来上がっていると思っていてもそうでないことがあるからです。もちろん練習の時間も十分とりたいものです。
実際に発話してみるとあるページから次のページに移った時、話しの流れがスムーズでないことがある。これを「筋が悪い」と呼ぶ人もいます。前のページのメッセージが次のページで説明されていなかったり、話しが飛んでしまったり。自分で読み上げて「あれ?」と感じる部分は聞き手にとってはなおさら「???」です。
そういう「筋の悪さ」に気づいてスライドの順番を入れ替えたり、情報を削除・追加するためにも本番の3日前までにはひととおり資料を完成させたいものです。
そして具体的な練習方法について。
よく「週末に自宅で練習します」という方がいらっしゃいますが、個人的には断然、職場の会議室(在宅でオンラインの場合は除く)を使うことをお勧めします。
なぜなら慣れ親しんだ自宅では限られた時間内に、緊張感を持って練習するのは難しいから。本番に近い、緊張する環境で練習をしておくことで本番でアガる度合いを下げることが出来ます。私自身はプレゼンの資料がひとおりできたと思った時点で、職場の小会議室を一日あたりふたつの時間枠を予約しました。
午前1回、午後1回。1回あたり実際のプレゼンの予定時間より10分程度長く予約します。
そして仕事中にその時間になったら、何も考えず条件反射的に小会議室に時計(タイマー)持参で行き、本番同様の立ち姿勢で練習をしました。
その際、「筋の悪いところ」に要訂正の印をつけておきます。実際のプレゼンより10分程度ながく会議室を予約するのはこの印をつける作業のためです。筋が悪いところがなくなれば会議室を使う時間は当然みじかくなります。
先程、会議室を予約して、時間が来たら「条件反射のように」会議室で練習をすると書きました。その理由は「当日うまく行かなかったらどうしよう」「途中で頭が真っ白になったらどうしよう」という時間を作らないためです。予定通り練習をすれば必ずできるようになる。と自分を信じて予定通りこなしていきます。。
1日に2回、本番に近い状態で立って話せば最低でも6回リハーサルをすることになります。内容に慣れれば「このプレゼンで達成することは何か」「各ページのメインメッセージは何か」は自ずと自分の記憶の中に定着します。そうなると話す文章を丸暗記しなくても、単語がでてこなくても「自分が言える言い方」で話しを続けることが出来ます。
【想定Q&A】役員が気にする3つの項目:コンプライアンス、利益、継続性
プレゼンの目的は承認をとること、何かの経過や結果を報告すること、あるいは説明することなどいくつかあります。いずれの目的であっても「よく聞かれる質問」の準備をされることと思いますが、その際、役員会などシニアマネジメント向けのプレゼンでは細かいことはあまり聞かれません。
経営層の関心事はコンプライアンス上、問題がないか?投資に対して利益はでるのか?承認して導入した後、それを継続できる仕組みがつくれるのか?(リソースがあるかも含む)といったことが多いようです。
シニアマネジメントは細かい現場での作業や工程について知る必要もありませんし、組織全体の方向の舵取りをすることがシニアマネジメントの役割だからです。
まとめ
ざっくりとお話してきましたが、もしかすると業界ごとにシニアマネジメントからの質問には他のパターンもあるのかもしれませんが少なくともここで共有した「コンプライアンス」「投資額と利益」「継続性」は業界を問わず経営陣にとっては重要なことであるはずです。
最後に繰り返しになりますが承認を取るための準備として以下のことがお役に立てたら嬉しいです。
・ 相手の反応を予測してそれにあったプレゼンの導入部分を作る
・ 当日までにできるようになるプレゼンの具体的な練習方法
・ シニアマネジメントからよく出る質問への対応を準備しておく
最後までお読みいただきありがとうございました。
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この記事を書いた人

仕事の英語パーソナルトレーナー
HR Specialist
河野 木綿子(こうの ゆうこ)
ロンドン大学 Goldsmiths College
心理学部 大学院卒業
25年間大手外資系企業の人事部に勤め、人材開発の専門家となる。その経験とロンドン大学大学院で学んだ学習理論と効果測定を活かし、日本で第1号となる仕事の英語パーソナルトレーナーを2014年に開業。
著名人含む約90名を、仕事の英語デビューに導いてきた実績を持つ。
【保有資格】
・ケンブリッジ英検
・IELTS 7.5 ※旧英連邦の英語4スキルテスト
・英国心理学協会の能力・適性テストの実施資格
※企業で面接、適性検査、能力検査を実施する資格