外国人上司は日本の慣習を知らないから「ネマワシ」が必要

この記事は外国人上司にレポートすることになった人、海外の人と直接やり取りをすることになった方が、スムーズに上層部からの支援を得られるようになるためのものです。

「根回し」はイメージが悪いけれどメリットも多い

会社など、組織で仕事をしている人にとっては、いわゆる日本語表記の「根回し」という言葉に馴染みがあることでしょう。広辞苑によると「根回し」とは;
「交渉・会議などで、事がうまく運ぶように、前もって関係者に話をつけておくこと」という解説が載っています。交渉や会議の席でその場で初めて議題を出すのではなく、事前に説明したうえで合意を取り付けておくというプロセスのことですね。

「根回し」をしておくことで揉めることなく時間的にも内容的にもスムーズに事を進めることが出来ます。何かを決定する際の潤滑油的な面もあるのに、必ずしもイメージが良くないですね。そしてなぜか「ネマワシ」とカタカナで表記した途端に、日本独特で英語圏の人にはないやり方として、さらにいいイメージのない言葉になりがちです。
でもカタカナ英語になった「ネマワシ」は外国人にとって「ありがたい」だけでなく必須であることもあるのです。

日本の諸事情を知らない外国人上司に「ネマワシ」が必須

「ネマワシ」という言葉のカタカナ標記には、日本独自の悪習慣のようなイメージがある反面、私自身は実務の経験上、外国から赴任してきた上司にとって必須のものだと思っています。その際のネマワシは事前に「当日はよろしくお願いしますね」というあいまいなものではありません。日本の諸事情を全く知らない外国人に日本独特の法律や慣習について予め情報をインプットしておく、欠かせないプロセスです。

ご存知の方が多いと思いますが、外国の本社から2年、3年の短期間で派遣されてくる人のことを Expat (Expatriate)と言います。彼らは限られた時間の中で、馴染みのない極東の国「日本」で、自国とは違う法律や商習慣に沿って成果を上げることを期待されています。

そしてビジネスで成功すれば任期満了後、帰国してしかるべきポジションが与えられます。逆に業績が芳しくないと受け入れてもらえる先がなくなり、職を失うこともあり得ます。任期が短いので最短期間で日本のことを知ってフルスロットルで活躍したいのです。

世界でも珍しい日本の就職と採用活動の説明の例

例えば大学生の新卒採用を例にとってお話します。
私の仕事は人材開発の他、新卒・中途採用がありました。なかでも諸外国と事情が大幅にちがう新卒採用のしくみと、組織の縮小の際の日本の労働基準法についてExpat達に説明する必要がありました。

日本で生まれ育つと新卒採用で大学生が2年、3年生から就活の準備を始めることは当たり前のように思います。これは世界中でもきわめてまれな慣習です。
説明が必要なのは以下のことでした。

就職活動は:
企業側も学生側も全国で一斉に始まること(フライングもあります)。

学生側は
・新卒で正社員採用されないと出遅れ感が付きまとうこと
(個人的にはそう思いませんが)
・アメリカのような実務経験を積めるインターン制度がないこと

企業側は
・新卒採用のインターネットサイトを開設すること
・説明会の開催
・書類のスクリーニング→数回の面接をすること
・内々定、内定、内定式等の引き留め行事

以上の情報を日本に着任したばかりの外国人事業部長に説明をしておく必要があります。
外国人事業部長ご本人は「当社は世界的な大企業だから採用なんて苦労しない」と思っています。
ところがグループ企業含め40万人の多国籍企業でも日本の大学生の就職先人気ランキングには200番台でも出てこないという「現実」を知らないので協力が必用とは思っていません。

内定を出してからも、内定辞退をされないための工夫を凝らして次々イベントを開くという厳しい現実があります。
あるとき事業部長を対象に2年後の新卒採用計画を立てる会議の司会をしたことがあります。
全員Expatでしたがその中に一人、着任して1年目の方がいたのです。うっかりネマワシをしていませんでした。

「今期の業績も速報値が出てない中で2年後の採用???馬鹿言うな!」といわゆる「ちゃぶ台がっしゃん」になって、会議室を出て行きました。
後日、会議を再招集した苦い思い出があります。この事業部長がご立腹になったのは、今期の業績も分からないうちに再来年のことを決めるだなんて。といういうことでした。

でも他にも理由がありそうです。
私の個人的な推測ですが、
「自分だけが事前に説明を受けていなくて日本の事情を知らないのかも?自分だけ軽んじられた?」
という焦りがあったかもしれません。

Expatにとっては短期間で業績を上げる、達成事項を一つでも増やさなければならない。そうしないと帰国後のポジションが危ういかもしれないというプレッシャーがあります。

外国人上司への上手な「ネマワシ」の仕方

ビジネス全般の話

上司が期限付きで日本にいる Expatの場合(今はオンラインだけのつながりもありますが)、日本の事情、今までの慣例など、Globalとは異なる日本独特な法律や仕組みをなるべく早いうちに伝える機会を取ったほうがよいでしょう。

日本の諸事情をまとめて、オリエンテーションとして実施するのもありだと思います。年間行事のスケジュール、関係する法律、日本の商習慣やプロモーションコード。
アウトソース先との取り決めなど。
長年日本で仕事をしていると諸外国との違いがあることを忘れがちです。自分が海外に派遣されたらどうなるか?ということを想像すると、その必要性は分かり易いですよね。

個別提案や交渉の事前準備

これがいわゆる日本的な根回しですが「事前に握っておく」だけでなく、その提案や交渉によって「どんな利益があるのか」。
具体的に説明して当日はがっちりサポートしていただけるレベルまでします。
英語の会議はたいていの場合、その場で一番上位の方が司会をされます。役員会であれば社長。となると当日までに説明と合意の機会をアポをとって持つとよいでしょう。

今回お伝えした「ネマワシ」の重要性は、コロナ禍でオンライン化した影響で一気に1対他人数の外国人上司たちとのやりとりが増えた結果、必須のプロセスと言っていいでしょう。Web会議の画面に全員集合してから唐突に提案をするのは、提案が通らないだけでなく、プロジェクト自体がうまく回らなくなるので大変危険です。

まとめ:

・日ごろ「ネマワシ」という言葉は日本特有の悪い習慣のように受けとめられがちですが、日本の事情を知らない外国人上司にとっては情報が手に入る貴重な機会。むしろ歓迎されます。

・会議のその場で初めて聞く話があると、知らなかったご本人は競争社会で横並びの人たちの中で「自分だけが事前に説明を受けていなくて日本の事情を知らないのかも?自分だけ軽んじられた?」と不安になって激昂する場合があります。会議前の情報提供は必須。

・「ネマワシ」が必用なのは日本社会の仕組み、商習慣だけでなく、社内事情についても必要なことがあります。

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この記事を書いた人

仕事の英語パーソナルトレーナー
HR Specialist
河野 木綿子(こうの ゆうこ)

ロンドン大学 Goldsmiths College 2000年
心理学部 大学院卒業

25年間大手外資系企業の人事部に勤め、人材開発の専門家となる。その経験とロンドン大学大学院で学んだ学習理論と効果測定を活かし、日本で第1号となる仕事の英語パーソナルトレーナーを2014年に開業。
著名人含む約90名を、仕事の英語デビューに導いてきた実績を持つ。

【保有資格】
・ケンブリッジ英検
・IELTS 7.5 ※旧英連邦の英語4スキルテスト
・英国心理学協会の能力・適性テストの実施資格※
※企業で面接、適性検査、能力検査を実施する資格

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