ASAPはスラングなので、ビジネス英語で会社や上司に使うのは失礼と聞きました。別の言い方など言い換えはありますか?

はい、大変失礼ですので at your earliest convenience など別の言い方をご紹介します。

上司に対してのマナーだけでなく同僚に対して急ぎの用事をお願いする際のマナーもお伝えします。

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ASAPとはどういう意味?

ASAPという言葉は As soon as possible の略で、日本語の「なるはやで!」に当たります。発音は敢えてカタカナで書くならば「エイサップ」と発音します。正式なビジネス英語ではないので、普段同僚や仲間同士で使うことが多いです。

英語を話す人たちはフレンドリーで、職場の上下関係がなくて、その結果、敬語もないと思っているイメージがあるようです。
日本語のように丁寧語、尊敬語、謙譲語のような分類はありませんが、英語にも目上の人に使う「相手を敬う敬語的表現」はあります。

特にビジネス英語の場合、上司と部下の上下関係ははっきりしています。上司と部下は人間としては対等でも、決定権・評価、人事権は上司にあります。人間関係を損ねる失礼な表現は避けたいものです。その代表例のひとつが ASAPです。

同僚や部下に日常的な職場での場面で ”It’s ASAP” とか “ASAP, please”ということはありますが上司に対して使うことはありませんなぜなら部下から上司に対して「なるはや!」と日本語でも言わないですよね。

実は Please も目上の人には使わない

中学生だったころ、英語の授業では「丁寧にお願いするときは文頭か文末に please を付けましょう」と習った方は少なくないと思います。私もそうでした。
ところが実際に英語で仕事をするようになってみると、役員や上司など目上の人に対して “Please” を使う人を見たことがありません。
なぜならば “please” には「~してくださいね」という強制のニュアンスがあるので目上の人には使わないのです。

Pleaseの使い方やニュアンスについて詳しく理解する>>

レストランやお店で店員さんに何かお願いするときは使いますが、文頭につけるとややキツイ感じになるので文末に付けることが多いようです。
レストランのスタッフの方やお店の店員さんとっは金銭と料理や品物のやり取りを通じて対等な関係にあるので丁寧に “please” を付けます。
例えば

ワインをもう一ついただけますか?
Can I have another glass of wine, please?

と言うように使います。

another glass of wine

は上品ですが

one more glass of wine

は、やや品格が下がります。

大手IT企業の役員の苦笑い

ある時、大手外資系IT企業の役員の方とご一緒した時にこんな話をしてくれました。
会議が終って自分のオフィスに戻ったら、机の上のトレーに付箋を貼った書類が乗っていた。

付箋には

Please sign ASAP

と書かれていたそうです。

この話をしてくれた役員は苦笑いをしていました。

書類に貼ってあった付箋に書いてあった言葉には先程お話した「2つの失礼」が並んでいました。ひとつ目は “Please”という言葉を使っていること、もう一つが ASAPです。

では本当に急ぎでお願いしたいときはどう言ったらいいかと言うと

なぜ上司に対するASAPとPleaseが失礼なのか?

英語圏で仕事をする人は時間の使い方に工夫をします。
とくに職位が上の人は分刻みのスケジュールと、毎日大量に受信するメールをさばきながら、常に仕事に優先順位を付けてこなしていきます。
そんな状況下で部下から

「なるはやでお願いしますね」
ASAP, please.

と言われたらどうでしょうか?
仕事の優先順位は役員や上司の裁量で決めるものだから、部下が押し付けるものではありません。

ASAP, pleaseに代わる上司に失礼にならないビジネス英語

ASAP, pleaseが失礼だということはお分かりいただけたことと思いますが、とは言っても「なるはやでお願いします!」と神様にすがるような切羽詰まった場面もありますよね。
そんなときのために絶対に失礼にならない表現についてお伝えします。

ASAPに代わる表現

「お手すきになり次第」
at your earliest convenience (直訳:一番早くご都合がついたときに)


【例文】
「お手すきになり次第、契約書にサインしていただけるとありがたいです」
I would appreciate it if you could sign the contract at your earliest convenience.

この言い方なら、上司が自分自身で仕事の優先順位を付けて対応できるので失礼には当たりません。

pleaseに代わる表現

「~していただけますでしょうか」
I was wondering if you could~

【例文】
「お手すきになり次第、契約書にサインをしていただけますでしょうか」
I was wondering if you could sign the contract at your earliest convenience.

日本語でも似ていますね。相手に対して押しつけがましくないように控えめな言い方です。
英語では文章の時制が一つ過去になると

「~していただけるとありがたいです」
I would appreciate it if you could ~

【例文】
「お手すきになり次第、契約書にサインしていただけるとありがたいです」
I would appreciate it if you could sign the contract at your earliest convenience.

日本語の発想と似ているので使いやすいと思います。これも日本語に限りなく近い発想の表現かと思います。ここでも時制はひとつ遡って、would と couldを使っています。If you couldは「もしもしていただけるなら」という仮定法ですね。

何時までにという差し迫ったお願いの時は?

どうしても急ぎで「何時までに」と、期限を切らなければならないときもありますよね?それでも上司にタイミングをゆだねなければならないのでしょうか?
そういう時には、それを伝える良い方法があります。

期限を伝えてから、客観的な理由を添える方法です。

【例文】
5時までに契約書にサインをしていただけると助かります。今日発送しないといけないからです
I would appreciate it if you could sign the contract by 5 pm as we need to dispatch it today.

このように伝えれば、自分の都合やわがままで急がせているのではないということが伝わります。
仕事上の差し迫ったニーズであることが伝われば、上司も迷わず協力してくれます。

同僚に対するお願い時のマナー

一緒に仕事をしていると、上司だけでなく時には同僚に対してお願いしたいことが出てきます。ここではそんな時、同僚に対しても守りたいマナーについてお話します。
英語が共通語の職場では、同僚に対しても仕事の場面では礼儀正しいやり取りが好まれます。

その際、突然お願い事をするのではなく予めこんなふうに声を掛けます。

「今、話しかけてもいいですか?」
Can I talk to you?

「今、お時間いいですか?」
Do you have a minute?

これに対して

「大丈夫」
Sure.

「どうぞ」
Go ahead.

という返事をもらえたら本題に入ります。お願い事をするときの決まり文句として以下表現がありますので、使っていきましょう。

「(私のために)お願いしてもいいですか?」
Could you do me a favor?

do +人の目的格 +a favorというのは英語らしい表現で、直訳をすると「人に好意をする」という意味です。

河野木綿子の小話【イギリス人同僚からのお願い】

個人的な思い出話になりますが、実は私が人生で初めて英語の職場に転職して、出勤第一日目のことです。イギリス人の同僚が私の席にやって来て、姿勢を低くして声をかけてきました。
Hi. Could you do me a favor? に続いて「ハサミを貸してくれませんか?」Can I borrow your scissors, please?という言葉が続きました。
初めて聞いたイギリス発音でscissors ハサミが聞き取れず、何度もSorry?と聞き返したら、相手が人差し指と中指でチョキチョキというポーズをしてようやく意味が分かった次第です。

一生忘れられない思い出です。

まとめ

TOEICで高得点が取れた。英語が話せるようになったと感じていてもマナーに不安がある。
できれば礼儀正しく、英語でする仕事でも評価されたい!と思ったら。。。

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この記事を書いた人

仕事の英語パーソナルトレーナー
HR Specialist
河野 木綿子(こうの ゆうこ)

ロンドン大学 Goldsmiths College 2000年
心理学部 大学院卒業

テストの高得点者が話せるようになるお手伝いをしています。
25年間大手外資系企業の人事部に勤め、人材開発の専門家となる。その経験とロンドン大学大学院で学んだ学習理論と効果測定を活かし、日本で第1号となる仕事の英語パーソナルトレーナーを2014年に開業。
著名人含む約90名を、仕事の英語デビューに導いてきた実績を持つ。

【保有資格】
・ケンブリッジ英検
・IELTS 7.5 ※旧英連邦の英語4スキルテスト
・英国心理学協会の能力・適性テストの実施資格※
※企業で面接、適性検査、能力検査を実施する資格

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