外資系企業の外国人上司は部下へのお願いの仕方が丁寧とその理由

この記事は、これから外資系企業に転職を考えている人が上司との人間関係についての一端を知るために役に立つ記事です。

日本人上司とのやりとりは「俺とオマエ」のことが多い

かつて企業で人材開発の仕事をしていた時は研修のために、シニアマネージャーだった時は支店訪問や制度の説明会のために、頻繁に出張をしていました。札幌と福岡は飛行機でしたが、それ以外は新幹線で移動。新幹線に乗るのは好きなので、四季の移り変わりを車窓から楽しんでいました。

途中の停車駅で日本人会社員の集団が乗り込んでくることがあります。4人以上のグループの時は通路を挟んで左右に分かれて座ることもあれば、前後に2人ずつ座ることもあります。日本人は欧米の人に比べて普段は話し声はあまり大きくないという印象ですが、グループで新幹線で移動という、日常生活を離れた状況だからか、幾分はしゃいでいるように感じることがあります。

そんなとき、グループの中でのやりとりが聞えてくると、ほんの数分で誰が一番エライか、誰が一番下か。というのが自ずとわかります。それは上の人は下の人を「オマエ」とかあだ名で呼びつけることが多いからです。
そして、命令口調で話したり、些細な落ち度を突っ込んだり、イジルことが多いです。

例えば「だからオマエはだめなんだ。勉強が足りんぞ。そんなことだからロストするんだ」。
どうやら顧客を失った話らしいと察しがつきます。

外国人上司のフレンドリーさと丁寧さ

私が初めて外国人上司がいる職場で仕事をしたのは1980年代のことです。その直前まで上司と部下の関係は「俺とオマエ」の日本企業にいたので、初めは上位の人たちとの距離の取り方が分かりませんでした。

そこはイギリス系の人が大部分の職場でした。外国人上司たちは、仕事中でもしばしば冗談を言い合って職場のデスクでミカンやスナックを食べながら雑談したり、時にはそれを分けてくれたりします。
次の職場はアメリカ系外資系企業で、上司はイタリア系アメリカ人。音楽が好きでNYC出身の、早口で話す人でした。会社の発表を部門メンバー全員を集めて話すことが多く、声の掛け方が

“Hey, you guys. I have something to talk to you. Listen.”

でした。
メンバー全員が自分の席を立って彼をぐるりと取り囲み話を聴いたものです。

いつもフレンドリーで気軽に話すかと言うと、そうではありません。
何か仕事を与えるときは自分のオフィスに呼んで、社員を椅子に座らせて話します。

「どうぞおかけください」 Have a seat.
と椅子を進めてから、
「調子はどう?」   How are you doing?

と一声かけて
「実はこういう仕事をしてもらおうかと思う」と切り出して、
こんな話し方をします。

“Do you think you can book the rooms, and coordinate a series of seminar in September?”


「あなたは~が出来ると思いますか?」
と、こちらの忙しさや感じ方、能力に配慮した頼み方をします。

また、敬語表現の Could you?を使ったリクエストの仕方を使って

“Could you draft the invitation letter to this training course for the managers in 〇〇 Department by Friday noon, please?”
「〇〇部門の管理職にこの研修への案内文を金曜日の正午までに策定することはできますか?」

日本企業だと
「これやってくれる?分からないことある?」

と一方的に仕事の割り当てをされることが多かったので、こちらの都合を聞いてくれる上司の丁寧な頼み方には初めビックリしました。

なぜ外資系企業の外国人上司は部下に対して丁寧なのか?

この問いに対しての答えには統計データがあるわけではないので、私自身の25年間の外資系企業経験から感じたことをまとめてみたいと思います。

短期間で限られたリソースで最大限の成果を出すことを求められている

海外から日本に赴任してくる外国人上司は Expatriate 略して Expatと呼ばれます。赴任期間は2年から3年。社長クラスだと5年くらいになることもあります。
その限られた赴任期間の中で、目立った成果を上げなければなりません。
その理由は;

・日本が多くの業界で世界2位~3位のマーケットであるため、本国から業績を上げることを期待されているから
・業績を上げられれば、日本から本国に帰任した時に赴任前より待遇の良いポジションが用意されるから
・逆に業績を上げられなくて短期間で帰任した場合は、ポジションがない → 退場 ということもあり得るから


といった事情があります。

そうなると、日本組織に用意されている人材(社員)の能力を最大限引き出して、成果を上げてもらう必要があります。そのために、社員とよい人間関係を築き、意見を引出し、ためらうことなく行動を起こせる組織運営をすることが必須なのです。

私は20年以上、人事部で人材開発分野の仕事をしてきました。
大抵の大手外資系企業の管理職研修には
・コーチング
・アクティブリスニング
・サーバントリーダーシップ

といった、部下の考えを引き出し、決断させ、行動しやすくするのに必要なスキルを身に付けるプログラムがあります。

その結果、部下に対しても丁寧に対応し、話を聞き、承認して、行動を支援する。という上司が評価される企業風土が出来るのではないでしょうか。
そして、日本人上司も部下に対して丁寧な方が多かった気がします。

時に「俺とオマエ」タイプの方もいらっしゃいましたが、度が過ぎるとモラハラ(パワハラ)的な上司として問題になったり退職に追い込まれることもあったようです。


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この記事を書いた人

仕事の英語パーソナルトレーナー
HR Specialist
河野 木綿子(こうの ゆうこ)

ロンドン大学 Goldsmiths College 2000年
心理学部 大学院卒業

テストの高得点者が話せるようになるお手伝いをしています。
25年間大手外資系企業の人事部に勤め、人材開発の専門家となる。その経験とロンドン大学大学院で学んだ学習理論と効果測定を活かし、日本で第1号となる仕事の英語パーソナルトレーナーを2014年に開業。
著名人含む約90名を、仕事の英語デビューに導いてきた実績を持つ。

【保有資格】
・ケンブリッジ英検
・IELTS 7.5 ※旧英連邦の英語4スキルテスト
・英国心理学協会の能力・適性テストの実施資格※
※企業で面接、適性検査、能力検査を実施する資格

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