日本の「就活」の特殊性:アメリカからのサマーインターンシップ学生に講演 (2023年6月28日)

主催団体: 

2023年6月28日、上智大学13号館にて、来日中のアメリカ人インターンシップ生35人に「ユニークな日本の就活」について講演をしました。

国際教育交換協議会(CIEE)さんがアメリカから迎え入れているインターンシップの学生35名に、世界的にみてユニークな日本の「就活」について講演をしました。

リンク: 国際教育交換協議会(CIEE)とは


この記事はファイザーに在職中、ニューヨーク本社の人事のミーティングで、「日本特有の採用活動の課題はあるか?」と聞かれたときに話した内容を元に、このたびアメリカ人インターンシップの学生さんたちにわかりやすく文化の違いも交えてお話した内容の記録です。

日本の新卒採用活動は何がユニークなのか?

全ての業界で一斉に同時期に始まる

毎年4月入社を前提に全業界で一斉に始まります。ただし、経団連が毎年、企業の新卒採用活動の日程についてのガイドラインを設定するため、経団連加入企業と非加入企業で開始時期がふた手に分かれます。

2025年新卒入社に向けた採用活動の場合、企業が採用の有無をウェブサイト上に公開するのは2023年の4月。それに続くインターンシップの実施が夏休み前後から翌年初めにかけてです。経団連加入企業の採用活動は2024年3月1日からオンラインエントリーが始まり、会社説明会、選考活動へと進みます。
一方、外資系企業(正確には多国籍企業)は経団連に非加入なので、当然先手を取ります。非加入団体のオンラインエントリー、会社説明会とそれに続く面接などの選考活動は加入企業よりも5カ月早い10月1日前後に始まっています。

このために起きる弊害だと私が考えるのは、「全ての業界で一斉に同時期に始まる」ことによって海外留学をためらう大学生がいるということです。6月に海外の大学の1学年を修了する、または卒業する場合、企業の採用活動や6月ごろから始まるインターンシップ(企業によっては既にスクリーニング対象)に出遅れてしまうのです。
新卒での企業への正社員としての入社を逃すと、あとは非正規雇用者としての職業人生を歩むか、自分で起業してスタートアップを立ち上げる可能性が高くなります。

採用されるためのリクルートスーツは知性と清潔感のため

インターンシップ生たちにここまでの話をした後で、日本人なら知っている「リクルートスーツ」姿の学生の写真をモニターに写したところ、ある学生が「あ、それ見た!」と反応してくれたので「どう思った?」と聞いたら「この暑いのに、スーツ着て何してるのかと思ったよ」と目を輝かせて答えてくれました。

皆が黒か紺色、またはグレーの飾り気のない上下そろいのリクルートスーツを着て黒の革鞄、革靴を履きます。また髪型も男性は短めのまとまった髪型、女性は髪が長ければ後ろにひとまとめに束ねます。
多くの学生が知性と清潔感を印象付けるために相当額の衣服代を使います。

なぜ学生たちは外見にここまでこだわるのでしょうか?
それは私独自の考えですが、日本にはアメリカやヨーロッパのような学生の長期インターンシップ制を受け入れる企業がほとんどないので、学生たちに職業経験が乏しいためではないでしょうか? 一部の理工系の学生以外は企業で買ってもらえるレベルの専門的な知識はまだありません。
そうなると学生たちは外見で他の応募者との差別化を図り、面接官に「見込みがある」と思ってもらう必要があるのです。この「まだウリが無い状態」は面接での面接官からの質問に対して「合格するための理想的な回答」を事前に準備することにもつながります。

面接に合格するための「理想的な回答例」をシェアして学び合う

面接で聞かれる典型的な質問と回答例をご紹介しましょう。

ひとつ目は「この会社に応募した動機は何ですか?」
この質問は中途採用の面接でも聞かれる当たり前と言えば当たり前の質問です。ただし新卒者の採用面接では「うかるための回答例」があります。回答例集と言うよりは学生同士が交流して情報をシェアする掲示板で「どこの会社でどんな質問をされた」ことをお互いに報告し合います。

製薬会社で新卒の面接官をしていたときに、頻繁に聞いた応募動機は「大切な家族が病に倒れたときに、製薬企業に就職して世の中の病と闘う患者さんのために役に立ちたいと思うようになった」と言うものです。祖父母であったり、伯父叔母であったり病気になった人がいたことで製薬会社への就職をめざすことにしたというストーリーは1日に何回も聞きました。

ふたつ目のよくある質問と回答例は
「学生時代に一番チカラを入れたことは何ですか?」
というもので、これを学生さんたちは「ガクチカ質問」と呼んでいます。

この質問に対しては多くの学生が部活動や居酒屋のアルバイトで「リーダーだった」と申告します。嘘だとは断言できませんが、一次面接のグループ面接のとき「リーダーでした」という話が次々上がってくると、学生の中にはリーダーしかいないのではないか?と思うことがしばしばありました。セカンドポジションが得意で居心地がいい学生がいるのが普通かと思います。

上智大学13号館にてインターンシップ生たちと 2023/6/28
日本の2年間に及ぶ就活スケジュールについて話す河野木綿子

ユニークで標準化された年1回のプロセスの弊害

就活のタイミングが合わずに苦戦しがちだと留学をあきらめる

交換留学で1年にしろ、海外の大学で4年間をすごすにしろ、海外の大学の卒業は6月であることが多いです。となると帰国前の4月に企業の2年後の採用の有無が公開されています。

もちろん留学の結果、英語が仕事で使えるほどのレベルになっていたり、日本の大学で身に付けられないレベルの専門知識を身に付けていれば10月の採用選考プロセス開始時に非経団連加入企業に応募するという手もあります。

ただし、できる限り日本企業に就職したいとなると6月ごろから採用プロセスの一環としてスクリーニングを兼ねた3日程度の「インターンシップ」の参加は叶いません。

その為に海外留学をためらう学生もいるようです。もしそうであれば、大学が就職予備校化していると言ってもいいのかもしれません。本来であれば、学業に専念し、人間関係を広げて若さを謳歌できるはずの4年間のうち、ほぼ半分を就職活動に費やしてしまうのはもったないように思います。

適性検査に理想の答えを選ぶと企業と学生のミスマッチが生まれ早期退職につながる

アメリカ人インターンシップ生から出た質問の中に「テストはありますか?」というものがありました。回答はYesですね。第1次面接と併行して能力検査と適性検査(いわゆるSPIテスト)の受験を義務付ける企業が少なくありません。その為の対策本があるほどです。

適性検査にも最適解を求めてそのとおり回答するという話をしながら、私は個人的な見解をインターンシップ生たちに伝えました。「就職活動とは自分にあった仕事を探すものだから、適性検査でCheat(嘘をつく)のはたとえ選考に受かってものちのち、自分の本来の姿とミスマッチが起きて、すぐに辞職するという結果につながる」。この一言に対してうなずく学生が少なくありませんでした。

厚生労働省は令和2年度(2020年度)における新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は、新規大卒就職者31.2%であったことを公表しています。さらにこれでも例年に比べ低下しているとの記事をネット上で見て、やっぱり恒常的に早期退職が多いのだ、と納得してしまいます。

一部のアメリカ人インターンシップ生たちは日本での就職に興味がある

日本の大学生の就職活動についてひととおりこちらから話した際に、アメリカ人インターンシップ生からは30分近くの間質問が寄せられました。「就活スーツは明るい色のほうがいいのではないか?」とか「手首にタトゥーを入れているので面接の際チェックされない?」というものの他、今からでも就職活動に参加できないか?という質問も複数ありました。

ただし、それらは日本企業に就職をしたいということではなく、Seniority(年功序列)やWork for the company all life(一生その会社にいる)を避けて日本の外資系企業でのびのびと働きたいということです。

講演を始める際に質問から始めました。
「皆さん、東京に来て何日ですか?」という答えには「2週間半」。そして「どう感じてますか?」には全員がポジティブな答えでした。安全で交通網が便利で、楽しい。暑いけれど「I am surviving(生き残ってる)」というコメントが出ました。

まとめ

最後に私から彼らにした質問は「皆さんのJob Placement Processはどれくらいの時間がかかりますか?」。この質問に対しては日本と同様、ネットを活用しての活動ですが半年しかかからない。という30年以上昔の日本を思いだす答えが返ってきました。

日本でも今後、応募者である学生の留学も含めた学びの機会が脅かされることなく、自分の興味や適性を偽ることなく、自分らしい服装で、効率的に就職先が決められるプロセスができればいいと強く思った次第です。

このように英語圏と日本国内の違いについての Intercultural Topicについてのワークショップや講演のご依頼は下記ホームページのトップページ右上の「お問合せ」リンクからお問合せ下さい。
お問合せと回答は無料です。

この記事を書いた人

仕事の英語パーソナルトレーナー
HR Specialist
河野 木綿子(こうの ゆうこ)

ロンドン大学 Goldsmiths College 2000年
心理学部 大学院卒業

テストの高得点者が話せるようになるお手伝いをしています。
25年間大手外資系企業の人事部に勤め、人材開発の専門家となる。その経験とロンドン大学大学院で学んだ学習理論と効果測定を活かし、日本で第1号となる仕事の英語パーソナルトレーナーを2014年に開業。
著名人含む約90名を、仕事の英語デビューに導いてきた実績を持つ。

【保有資格】
・ケンブリッジ英検
・IELTS 7.5 ※旧英連邦の英語4スキルテスト
・英国心理学協会の能力・適性テストの実施資格※
※企業で面接、適性検査、能力検査を実施する資格

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