外国人上司に失礼のないように英語でお願いメールをしたいのですが、どうすれば良いですか?

Pleaseの使用は避け、「件名」「メールを書く順番」「丁寧な表現」を相手がわかりやすく意識して書きましょう

上司には失礼のないようにメールを送りたいですよね。日本人上司に対してもお願い事は気を使います。では外国人上司にお願いメールを送る時の注意点はどんなことでしょうか?この記事では外国人上司にメールでお願いするときの注意点3つと、あなたが送ったメールをきちんと読んでもらえ、さらに返事ももらえる「基本のメール作成方法」4つをお伝えします。

上司に英語でお願いメールをするときの注意点 3つ

① Pleaseは強制力があるので目上の人には避ける 

文章に Please を付けると丁寧になる、というのは間違いです。
Pleaseには強制力があり、「やってくださいね」というニュアンスがあるので目上の人には使いません

その代わり、以下のような敬語表現に当たる言い回しを使います。

1)「~していただけないでしょうか?」
2)「~していただけるとありがたいです」

上記日本語のように「~をお願いします」ときっぱり言わないのと同様、英語でも柔らかい表現がありますので、2つご紹介します。

定型表現
「~していただけないでしょうか?」
I was wondering if you could~

例文:
「次の月例報告書のための締切はいつか教えていただけますでしょうか」
I was wondering if you could tell me when is the due for the next monthly report.

「例のポジションへの応募方法を教えていただけますでしょうか」
I was wondering if you could tell me how I can apply for the position in question.

お気づきかと思いますが     

I was wondering if you could

過去時制になっています。
これは英語では willをwouldにする、can をcould にするなど、現在よりひとつ前の時制の助動詞を使うと丁寧な表現になります。

定型表現②
「~していただけるとありがたいです」
I would appreciate it if you could~

例文:
「次の月例報告書のための締切はいつか教えていただけるとありがたいです」
I would appreciate it if you could tell me when is the due for the next monthly report.

「例のポジションへの応募方法を教えていただけるとありがたいです」
I would appreciate it if you could tell me how I can apply for the position in question.


ここでも助動詞の時制、willがwouldに、 canがcouldに、と、ひとつ前の時制になって丁寧な表現になっています。

なぜ上司に対して強制力のある Please を避けるのか?
多くの英語圏の企業組織では、職制が上に行けば行くほど、仕事の難易度ともに責任範囲が広くなります。そうなると限られた時間の中で仕事と、本国から同伴してきた家族のことについても責任を果たしながらこなすために、仕事の優先順位付けには細心の注意を払っています。
そんな中で部下から「やってください」と強制的に割り込まれるのは迷惑になりがちなので、極力避けたほうが良いのです。


② 相手が上司でも締切りをハッキリ伝える

日本では上司や目上の人にこちらからお願いごとをしておいて、締め切りを言うのは厚かましくて失礼ではないか?と心配する人が多いですね。
でも仕事でお願いごとをする際は、締切りをハッキリ伝える方が、失礼どころか逆に親切です。なぜなら締切りがわかれば、その仕事の優先順位を決めやすいからです。

これは前出のように、相手が上司であるかどうかに関わらず、英語でお願のメールを出すときの大原則です。締切を設定する表現の例として日付を明記しましょう。
時差がある相手の場合は更に、下記のようにどちらの標準時かという情報も添えれば間違いありません。

August 20th JST (Japan Standard Time) 

締切り表現の例:
1. by October 7th 5 pm JST
2. In a day or two. (1両日中に)
3. Within this week(今週中に)


以上のようにいくつか考えられますが1. by October 7th 5 pm JSTが一番お勧めです。
というのも2. In a day or two. (1両日中に)3. Within this week(今週中に)は、物腰は柔らかいですが、解釈が人によって違うことがあり得ますので、日にちや時間を明記する1. by October 7th 5 pm JSTのほうが、間に合わないという間違いが起きません。

上司へのお願いで、ASAP(なるはやで)は禁止

上司へのお願いでも締切りを明記するのは大切です。ただその際に使ってはいけない、失礼な表現があります。それはASAPです。

A. S. A. P (エイサップ)= As soon as possible できるだけ早く
は使ってはいけない

外資系の職場で使う省略語として代表的なもののひとつですが、これは目上の人には使いません。Pleaseと同じく、強制力があるからです。
同僚や部下に対してなら使っても良いでしょう。でもその際も単独で

ASAP!

と言うのは失礼です。親しい間柄であれば、以下のようにニュアンスを和らげる表現を付けるようにしましょう。

ASAP would be fine. なるはやだと素晴らしい。
ASAP if you could. もしできたら、なるはやで。

この程度なら許されそうです。

ASAPという表現については、こちらの記事でも詳しく解説していますので、合わせて知識をつけてください。

上司に「なるべく早く」と頼むときの失礼にならない表現

上司にASAPは失礼。とはいっても、本当になるべく早く契約書にサインして欲しい時、話をしたいときってありますよね。
そんなとき、上司に対して失礼にならず、かつ「至急」が伝わるのはこんな表現です。

定型表現
at your earliest convenience
あなたの一番早い都合のいい時に(意訳:お手すきになり次第)

例文:
お手すきになり次第、契約書にサインを頂けますでしょうか?

I was wondering if you could sign the contract at your earliest convenience.
I would appreciate it if you could sign the contract at your earliest convenience.

そして「急ぎ」の自己都合でない、客観的な理由をこの後に一言添えると、上司に対する説得力が増します。

例えば、「5時までに宅急便業者に託して先方に発送する必要がある」というお願いの背景です。

例文:
5時までに宅急便業者に託して先方に発送する必要があります。
This contract needs to be picked up by the delivery service by five.

このような上司に急いでほしいときのお願いごとのポイントを動画でも解説しています!
【YouTube動画】”「なる早で」を失礼なく使い分ける”

③上司に「時間を頂けますか?」英語的な発想の表現と明記すべきこと

上司と一対一で話をしたいときがありますね。そういうとき、日本語だと「お時間を頂けますか?」が通常です。
英語は「時間をください」give me timeとは言いません。

定型表現
Could you spare me some time?
私にいくらかのお時間を取っていただけますか?

という表現を使います。
spareとはスペアタイヤのスペアで「取っておく」と言う意味の他動詞です。

このとき大切なのは「いつ、どれくらいの時間」と遠慮せず具体的に希望を伝えることです。
上司へのお願いは日本人だと遠慮がちになりがちです。でも多忙な上司にしてみれば他の仕事の合間に時間を取ることになるので、いつごろどれくらいの時間が必要なのか、すぐに知りたいところです。

そこで次のような具体的な表現が好まれます。

例文:
水曜日のどこかで、私に30分時間を頂けますか?
Could you spare me 30 minutes sometime on Wednesday?

読んでもらえて、返事がもらえるメールを書くための基本 4つ

1)タイトルには読むだけでメールの用件がわかる具体的な表現を使う

職制が上の人ほど、たくさんのメールを受け取るので、限られた時間の中で全部のメールに目を通すことはありません。
読むか読まないかの判断は、メールのタイトルで決めます。

漠然とした件名はアウト

X About 〇〇 (〇〇について

という漠然としたタイトルだと「〇〇って何だっけ?」と考えてすぐに思いつかなければ削除される可能性が高いです。

日本人同士のように親切に「先ほど頂いたメールの〇〇は何のことでしょう?」と折返し質問をしてくることはまずありません。
それは不親切なのではなく、時間を大切にしていることと、メッセージを伝えるのは発信者(発話者)の責任であるという英語文化圏の発想によります。

上司や同僚に限らず読んでもらえる内容が具体的なメールのタイトルの一例として

【Meeting Request】Budget Allocation for 2024
(ミーティングのお願い 2024年の予算割り振りについて)

のように、読んだだけで頭をひねることなく「あ、あのことね」とわかってもらえるタイトルにします。

2)お願いごとの締切りは遠慮せずこちらから提示

こちらからのお願いでも、遠慮せずに締切りを明記します。相手が優先順位をつけやすいので親切です。
締切りが不明な場合、日本人は親切な方が多いので「いつまでですか?」と聞いてくれる人もいますが、英語圏の人とやり取りをする際は、お願いの内容があいまいだとそのまま放置されることが多いです。

関連記事>>あなたの書いたメールに返事が来ない理由

3)メールを書く順番:挨拶の後はすぐにメインメッセージ、説明はそのあと

多くの日本語のメールは、説明から始まって、最後に以上の理由で〇〇をしていただきたい。という構成になりがちです。
ところが英文メールの原則は初めにメインメッセージ(ここではお願い事項)、そのあと理由の説明をします。
従って、英文メールを読む際に多くの人が最初の3行程度を流し読みして、そこから先を読むか読まないか判断します。

3行読んで、用件が分からない場合はスルーされる可能性があります。反対に用件が伝われば、2段落目、3段落目の最初の数行だけ流し読みして、重要だと思えば詳細な情報を拾い読みすることになります。

メールを書く順番は「メインメッセージ→説明」

メールは、

1.メインメッセージ(締切も含む)
2.説明

の順番で書くよう心がけましょう。日本語メールもこの順番なら用件が伝わりやすく、相手の時間も無駄にすることがありません。

4)攻撃的な文調は避け、丁寧な表現を使う

仕事をしていてときには感情的になることもあるかと思います。でも怒りに任せてメールをかくのはお勧めしません。カッとなって書いたメールが時に転送されてこちらが思いもよらない人の目にふれることもあるからです。
たとえ抗議のメールを書くときでも、誰から見てもこちらに非が無い丁寧な表現を心がけましょう。

今なら「この表現を使っても攻撃的にならないか」AIツールに相談しながら作文することもできます。

関連記事>>ビジネスでは避けるべき英語表現

まとめ

英語のやりとりはフレンドリーというイメージがあります。
一面、それは正しいですが、職場でのやり取りは基本的に敬語的表現で、特に上司に対しては丁寧な話し方をします。

その理由は、上司が仕事の最終責任者で仕事上の指示は絶対であること、社員の人事権を握っていることなどです。
日本企業のように人事部と事業部長が人事権を持っているのと異なり、直属の上司はあなたの進退を決めるキーパーソンです。
となると、できるだけ気持のよいやり取りをして良い人間関係を築きたいものです。

TOEICの点数は取れたのに、外国人上司や同僚とのやり取りでどう持ち掛けたらいいか悩む。
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仕事の英語パーソナルトレーナー
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この記事を書いた人

仕事の英語パーソナルトレーナー
HR Specialist
河野 木綿子(こうの ゆうこ)

ロンドン大学 Goldsmiths College 2000年
心理学部 大学院卒業

テストの高得点者が話せるようになるお手伝いをしています。
25年間大手外資系企業の人事部に勤め、人材開発の専門家となる。その経験とロンドン大学大学院で学んだ学習理論と効果測定を活かし、日本で第1号となる仕事の英語パーソナルトレーナーを2014年に開業。
著名人含む約90名を、仕事の英語デビューに導いてきた実績を持つ。

【保有資格】
・ケンブリッジ英検
・IELTS 7.5 ※旧英連邦の英語4スキルテスト
・英国心理学協会の能力・適性テストの実施資格※
※企業で面接、適性検査、能力検査を実施する資格

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