社会人の海外留学のタイミングは人それぞれ

この記事は大学生、社会人でこれから海外留学に行こうか、いつにしようか迷っている人のためのものです。

10月が海外留学の新学期

Twitterの英語学習系の投稿を見ていると、今は10月からの新学期に向けて、留学生が渡航する季節であることを思いだします。
あの『ビリギャル』のモデルとなった小林さやかさんもコロンビア大学Teachers’ College で事前の語学研修を終えられました(2022年)。

ずいぶん時間が経ちましたが私も1999年の9月23日にイギリスに渡り、10月に入ってすぐ大ホールでのエンロールメントの列に並んで手続きをしたことを思いだします。

クレジットカードの支払い限度額を引き上げてなかったため、年間授業料が払えず慌てました。時差のためにその日の夕方を待って日本のカード会社に連絡して限度額を引き上げてもらった苦い思い出があります。

ニーズによって様々なタイミングで留学

当時、私は38歳になっていました。なぜその年で?とよく聞かれますが、人事という仕事を基礎から体系立てて勉強する必要性を強く感じる出来ごとがあったからです。

自分が人事の仕事をしている会社で、海外本社の制度をそのまま導入した結果、ある事業部の組織が人間関係の崩壊から機能しなくなった例を見てしまったからです。

「人事の仕事は人の人生を左右する。専門知識のない人間が触ってはいけない」。
勉強したいと強く思いました。

その当時、私はマンションを購入して、住宅ローンを払っていましたが、実家の母親もまだ元気で、自分の体調も安定していて行くなら今しかない。と思ったのです。

本当は会社を辞めずに、国内で週末に学べる場所を探しましたが、当時は私が学びたいと思っていた企業人事を体系的に学べる機関がありませんでした。今ならインターネットもありますし、海外に行かずとも学べたかもしれません。

でも、現地で学生寮に住んだことは私に忍耐力とトラブル対応力を付けてくれた貴重な経験です(笑。

国内にないとなると、どこなら勉強できるか?と当初は途方にくれました。今ほどインターネットで情報が取れる時代ではなかったので、ロンドン大学で博士号を取っていた友人に相談しました。彼女がロンドンの友達に頼んで大学のパンフレットを積み上げると厚さ8センチになるくらいたくさん取り寄せてくれました。

それを見て「ここならよさそう」という大学を見つけ、早速夏休みを取って現地に飛びました。夏休み中の事務室に入って行って「来年応募するので入試の申込用紙を一式ください」ともらって帰国し、準備を始めました。

私が学んだコースはUniversity of London, Goldsmiths Collegeの心理学部の大学院に解説されていた
Psychological Assessment in Organizations です。オファー前の選考面接で言われたのが、「本当に日本人か?私の知っている日本人は自分から英語ではなさない」とのことでしたが、15分間の電話面接では受講したいという思いをエピソードを交えて説説と訴えました。結果的にオファーを受けることが出来ましたが、日本人第一号とのことでした。

内容はUnder Graduateで学ぶ心理学の基礎全般と、学習理論、人事の採用、育成、効果測定と関連法規です。採用というからには面接手法、適性診断、能力測定まで世界最新の実務的な知識とスキルを学びます。

クラスメートは17人。そのうち社会人経験なく、大学から直接来た人は3人だけ。学校を卒業して社会人を経験してから、必要が生じて大学院に行くのは珍しくないようでした。

現役の企業の経営者、ロンドン警察の教育担当者、会社員がいましたが、フルタイムの学生ではなく、2年かけて卒業する仕組みになっていました。私は学生専業で1年で詰め込んで学びました。1年で卒業できるのは社会人を中断して収入のない私にとってはありがたかったです。

20代で大学院留学することのメリット

私が留学したのは38歳になってからですが、若いうちに海外留学したほうがいいという意見もあります。

なぜなら教育を投資、学位を武器と考えて、大学卒業後、最短で海外の大学院で学位を取り、帰国後外資に入社してキャリアをロケットスタートするという考え方です。

就職も有利になりますし、高額な年収を手に入れるチャンスも日本で大学を卒業後、日本企業にはいるより大きいかもしれません。

ただし、もし私が新卒で海外の大学院に留学したとしたら、自分なりの大きな課題とそれを解決したいという強いモチベーションなしで履修するにはあまりにも過酷なカリキュラムだったと思います。

授業のない日は朝10時から夜10時までひたすら寮の自室で本を読み、メモを取ってessayを書きました。留学していた365日間で机に向かわなかった日はたった3日、とはっきり覚えているくらい勉強に明け暮れました。

どう過酷なのかというとessayの提出日が3つのコ科目で同じ日に重なったり、その前日が Tutorialだったりで、3日続けて明け方3時まで書きものをしていたことがあります。

essayとは小論文のことで、日本語のエッセイ、随筆とはまったくの別物。過去の論文を読んで自分なりの見解を展開する『「学術誌」に投稿できるレベルのもの』(Essay って何ですか?と聞いた私へのProfessorの説明)です。

Tutorialとは私たち5人に対して、博士課程の学生が一人Tutorとして司会をしてディスカッションをする1時間のセッションの事。そのたびに事前にたくさんの専門書を読んでおかないとディスカッションに参加できません。すでに私も年齢を重ねて小さなことでは驚かない度胸が付きましたが、それでも今からTutorialに参加しなさいと言われたら、相当なプレッシャーを感じます。

学びたいときに留学する

個人的には、行きたくなったら行く。学びたくなったら行く。必要に迫られて行くがベストではないでしょうか。

というのも、ある程度仕事を経験して、自分なりの視座が出来てから、解決したい課題があると焦点のブレない、深い学びがあると感じたからです。苦手だった統計学もカリキュラムにあるから学ぶのではなく、学べば活用できるデータの選択肢が広がると納得して学んだので、それ以降の仕事の選択にも大きく影響しました。

単にキャリアアップのためだけでなく、自分が世の中のために何をしたいか、何が出来るのか。一旦、社会人生活をお休みして学んだことは私にとって宝物です。