現在完了形と過去形の使い分けと、今、アメリカ英語に起きている変化

ビジネスコミュニケーションを受講されている生徒さんからよく寄せられる質問に「過去形と現在完了形の違いがいまひとつわかりません」というものがあります。
ここではその違いを解説します。
併せて、アメリカ人の現在完了形の感覚が変わってきていることについても取り上げます。

Maybe from the next time

現在完了形と過去形の違い

過去形は、ある時点でなになにをした。ある時点でこうだったという意味です。今現在どうなっているかは関係なく過去のある時点のことを客観的に伝えます。
それに対して現在完了形には、その人の過去のある出来事についての思いが含まれています。

記事の最後に解説動画もあります!

現在完了形に潜む「思い」

1)「たった今」起きた出来事

ちょうど今、入り口に着いたところだ。
I have just arrived at the entrance.

過去のある時点で起きた出来事でなく、たった今起きた!という気持が込められています。

2)継続している出来事についての「もう」という気持

この会社でもう5年、仕事をしています。
I have worked for this company for five years.


この「もう、」という気持で今までずっと仕事をしてきた、そして「もう」5年経った。という発言者の達成感や振返り感が表れています。
これがただの過去形であれば

この会社で5年、働いた。
I worked for this company for five years.

と、客観的な事実を言っていることになり、この一文だけでは「思い」は感じられません。

これがもし現在完了進行形でも同様に、継続していることに対して「もう」という思いが込められます。

今週はずっと残業している
I have been working overtime this week.

3)経験・達成感を伝える

単に、過去にこういうことがあった」と言うより現在完了形を使うことによって「自分はこんな経験をした」という言い方をすることにより、誇らしい思い、あるいはネガティブな経験なら、残念な思いが込められています。

ニューヨーク本社に何度も行ったことがある。
I have visited New York HQs many times.


ついにやった!
I have finally made it!


自分の経験を少し誇らしげに語っている印象を与えます。
もしこれが過去形であれば

ニューヨーク本社に何度か行った。
I visited New York HQs many times.


私は(何かを)した。
I made it.

この場合は、過去の事実を客観的に描写しています。

4)「こうなっちゃった」という結果を伝える

現在完了形だと、今の時点では最終的にこうなってしまったという結果を伝えます。

お財布を家に忘れて来ちゃった。
I have left my wallet at my place.

だから、今お財布が手元にない。という結果と向き合っています。
一方、過去形だと

お財布を家に忘れた。
I left my wallet at my place.

という過去のある時点での出来事を客観的に伝えていて、その後で弟が届けてくれたかどうかはわかりませんが。

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最近、アメリカ英語では現在完了形をあまり聞かなくなった

特に統計があるわけではありませんが、最近アメリカ人の発言を聞いていると現在完了形はあまり使わず、シンプルに過去形を使う傾向があるように感じます。
これは私だけの感想かな?と思いましたが、ネット上の記事でたまに見かけることがあります。

例として「教えてgoo」の質問コーナーのリンクを貼っておきます。アメリカ人は比較的完了形を使わない?

イギリス英語の方がアメリカ英語に比べて現在完了を使うようですね。もともと英語は英語と言うくらいですからイギリスで使われていたものが、アメリカ大陸で共通語として使われるようになって本日に至ります。年月が過ぎるとともに、用法や単語の意味、発音が変化を続けています。
その一つが現在完了形を使わなくなったということでしょう。

should have + 過去分詞「するべきだった(のに、しなかった)」という表現は好まれない

ここで、現在完了ではありませんが、現在完了形の前に助動詞「should」 が入った場合の用法に触れておきます。
多くの方が受験勉強で学ばれた文法項目だと思いますが、実はこの表現は仕事の場面ではあまり好まれません。

数字を改訂しておかなければならなかったね。
You should have revised the figures.


という過去の失敗を非難するような表現を使うよりは、

たぶん、次回までに数字を改訂したほうがいいね。
Maybe you should revise the figure by the next time.


次回からはこうしたほうがいい。と将来に向けて前向きな助言が好まれる傾向が強いです。
英語でビジネスをする際は、限られた時間と資源の中で効率的に結果を出すことが常に求められます。

既に起きてしまったことを振返って掘り返すよりも、今後どうしたらいいかという提案型の発言が好まれます。
この傾向は会議で、的を得ない発言がでたときも同様で、発言者を責めることなく

あ、それイイですね。じゃ、次に行きましょう。
That’s good. Let’s move on to next.


と司会者(たいていその場で一番地位の高い人)が発言者を否定することなくさらっとスルーことがあります。
日本の伝統的な企業だと的はずれな発言をすると「もっと勉強して来い」とか「だからお前はだめなんだ」と上司や先輩社員からいじられることがあるのとは全く異なります。
無駄な時間を使わないようにすることが優先されます。

この記事を書いた人

仕事の英語パーソナルトレーナー
HR Specialist
河野 木綿子(こうの ゆうこ)

ロンドン大学 Goldsmiths College 2000年
心理学部 大学院卒業

テストの高得点者が話せるようになるお手伝いをしています。
25年間大手外資系企業の人事部に勤め、人材開発の専門家となる。その経験とロンドン大学大学院で学んだ学習理論と効果測定を活かし、日本で第1号となる仕事の英語パーソナルトレーナーを2014年に開業。
著名人含む約90名を、仕事の英語デビューに導いてきた実績を持つ。

【保有資格】
・ケンブリッジ英検
・IELTS 7.5 ※旧英連邦の英語4スキルテスト
・英国心理学協会の能力・適性テストの実施資格※
※企業で面接、適性検査、能力検査を実施する資格

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